積みは快楽だ 社会人編

読書その他の雑記

盛り上がらない第二部オープン戦「星界の戦旗6」森岡浩之

 

内容

主人公陣営が負けて十年後、逆襲のはじまり、第二部開幕

感想

ボーイミーツガールのボーイだけ老けていくのは悲しいなあ。主人公力も失って久しいし。作者も読者も順調に老けてるからありといえばありなのか。

アーヴ(主人公陣営、有能、高慢、不遜)が大口叩いて普通に負けて十年も悲しい。

  上が無能で負ける展開 ← わかる

  敵が有能で負ける展開 ← わかる

  上から下まで有能で敵は無能で負ける展開 ← ???

だって敵にネームドいないんだぜ。銀英伝でいうと、ヤンのいない同盟に負けるラインハルト様。そのギャップを楽しむべきなのか?

そんな中での5年ぶりの新刊! 逆襲の緒戦! フラストレーションを解消して盛り上が・・・らないですね。特に普通でした。まあまだ戦いは始まったばかりだし・・・何年後か知らんけど続刊は出たら買いますよ。だから惰性かつ低い期待を裏切ってくださいな。

再び推理マシマシ大盛「その可能性はすでに考えた 聖女の毒杯」井上真偽

 

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

 

まったく、何という空理空論。――互いに大法螺の棍棒で殴り合っているようなものである。

内容

ある村の結婚式の最中に、酒を回し飲みした親族の中で男だけが毒殺される。誰がどうやって毒を仕込んだのか、それともこれは「カズミ様の呪い」なのか

その可能性はすでに考えたシリーズ第二弾。

感想

相変わらず事件は超高速展開、130ページで事件の情報が出そろい、あとは推理推理アンド推理。でてきた推理の数は数える気にもならない。

最初は被害者たちがお互いに犯人よばわりする推理小説おなじみの穏当?な展開に油断していると、フェリー上で拷問ショー直前というアクロバティックな舞台で推理合戦と、外連味も相変わらず。

それを楽しめるかというと確かに楽しい。メタ的な視点だと、仮設と反証には論理性以外にも、「面白くなければならない」という枷がはまっているのだけれど、それを巧みに伏線を配置することで回避しているのは実に良い手腕。

ただなあ・・・どうしても真相が伏線の間をすり抜けたものになってしまうのがちょっと歯がゆいかな。途中から推理が複雑化して「本当に全部考えたの?」ともやもやする。

本当は表とか見取り図とか手掛かりとにらめっこしながら「俺の考えた可能性」で作者と勝負するのが一番楽しめるんだろうなあ。やらんけども。

あと、ランキング上は本作のほうが前作より上ですが、個人的には前作のほうが楽しかったです。前作感想↓

www.tsumi-kai.com

 

こいつのように仕事がしたい、でもこいつとは同僚になりたくない「フラジャイル」1-12 恵三朗、草水敏

感想

主人公の岸先生は「こいつのように仕事がしたいNo1」&「こいつとは同僚になりたくないNo1」という感じですね。

「人間がやってるんだ! ミスも錯誤も起こる前提で―」「うちは10割出しますよ」

あり得ない10割と言い切ってしまう、自信、覚悟、能力、責任感を考えると震えますねえ。
あと火箱さんね。
火箱さんは登場時は悪い女なんですけど、そこまで悪になりきれないんですよね。だからネジとんでる上司と主人公には勝てずに立ち往生して、それでも前には進む。良い。
魅力的な登場人物が仕事にプライドを持って戦う様が見たい方にはぜひぜひ。おすすめです。

幻想的な酩酊感 「少女地獄」 夢野久作

 

少女地獄 (夢野久作傑作集) (創元推理文庫)
 

惜しがる程の一生じゃない。恥かしがる程の名前でもない。親も兄弟もないんだからね。但し・・・・・・タッタ一人君だけは、僕を惜しがってくれやしないかと思っている。

 死後の恋

死後の恋の話を信じてくれという怪しい男の話を聞くことに。軍人の友人が実は貴族のうまれなのではないか・・・

戦場の雰囲気と怪しい話と怪しい報酬、壮大なスケール、そして悲劇。 傑作。

氷の果て

兵卒の男がのんびり任務をしてると、陰謀劇にまきこまれ・・・後半は一大絵巻物語、一緒に旅をしている気分。後半をもっと書いてくれよお。ペース配分かたよってるよお。

少女地獄

何んでもない

うそつき少女大暴れ。うそをついたら隠すためのうそを隠すためうそを・・・遺書もきっと嘘。

火星の女

のっぽ少女大暴れ。復讐。ずいぶんとマア手の込んだ復讐じゃないか。

全体的な感想

さすが夢野久作の文章は妙なリズムの酩酊感で魅せてくれる(ただし読んでて疲れる)

収録短編は全部人が死ぬ。悲劇的な死が多いんだけど華がありますね。次は新潮文庫でも

死後の恋: 夢野久作傑作選 (新潮文庫) が出たのでそっちも読もうかな。

 

奇想現代文学ミステリ?「ミステリウム」 マコーマック

 

ミステリウム

ミステリウム

 

内容

ある田舎町に水文学者と名乗る男がやってくる。その後、町では次々と人が死んでいき、新聞記者がその真相を探るために住人を取材する。

感想

初マコーマック。疲れた。

基本的にはミステリの筋立て。明かされる真相は特殊で、今まで胸糞な真相やつまらない真相の小説はいくつも読んできたけど、そういうのとは違う「知らないほうが良い真相」は初めて。決して悪い意味ではない。

結局「真相」かどうかも定かではないし、「知ること」というのは暗闇を照らすものではない不気味なものという小説かなあ。

しかし解決編?にたどりつくまでの道中はひたすら不気味で陰鬱なインタビューが続き、のめりこむけど楽しめないという感覚。長編でエンタメ要素がないのはなかなかの徒労感。あー疲れた。次マコーマック読むとしたら短編にします。 

とにかく推理合戦 「その可能性はすでに考えた」 井上真偽

 

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

その可能性はすでに考えた (講談社文庫)

 

内容

閉鎖的な新興宗教の村で集団死事件が発生。唯一の生き残りの少女は、首を切られた少年に運ばれて救われたというが・・・。「奇蹟」を求める探偵があらゆる推理を否定する。

感想

80ページという高速で事件が終了、あとは延々推理合戦というすごいミステリ。ど派手な敵キャラが次々と現れ、奇抜な推理を披露する。

僕の考案したトリックの名称は「ウビ・エスト・デウス・トゥス?」――日本語で「君の神様はどこにいる?」

推理を披露するときかっこいいトリック名を付けるのは笑ってしまう。必殺技かな? とにかく過剰なトリックとロジックとトリビアと傍点とダッシュで、推理のお約束を徹底している。推理小説の遊戯性をとことん追及してアルコール度数96%で酩酊必死だ。

あとは捨て推理をどれだけ楽しめるか? につきるかなあ。伏線が捨て推理またはその否定に使われるだけなのが多いのも仕方ないといえば仕方ない。

挑戦的な姿勢はすごく好感なので、次の「聖女の毒杯」も読みます。評判良いし。

追記:読みました↓

www.tsumi-kai.com

 

そして誰もいなくなった後、全員復活 「六つの航跡」 ムア・ラファティ

 

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)

六つの航跡〈上〉 (創元SF文庫)

 

そして誰もいなくなった」後、全員復活

内容

クローン技術と記憶の継承で不老不死が可能となった未来、六人の乗った宇宙船で六人全員が死亡(他殺)。その後記憶を失った状態で六人がクローンで培養槽から復活。一体何が起こったのか? 犯人は誰なのか?

感想

クローズドサークルで全員が死亡、復活という奇抜な冒頭。最初に提示されるクローン七原則、登場人物の訳ありにも程がある過去、過去が明かされると同時に分かるクローン技術の歴史、そしてポンコツAI。

道具立ては非常に挑戦的で魅力的なんだけどなあ・・・うーん・・・消化不良だなあ。

上巻までは楽しく読めたが不自然さと無理やり感が下巻あたりはずっと尾を引いたままでサスペンスに乗るに乗れず失速。この設定でラストにサプライズ無しも厳しい。面白さのピークは冒頭だったなあ。惜しい。