積みは快楽だ 社会人編

読書その他の雑記

【感想】推理デスゲームの完成形「名探偵に甘美なる死を」方丈貴恵

 

内容

名探偵達が館に閉じ込められて、VR空間と現実の両方の事件を推理するデスゲーム開始

感想

デビュー作から特殊設定ミステリ書き続けてきた方丈貴恵ですが、3作目にして「完成」したなという感じで、感慨深いですね。

今回の特殊設定はVR、そして推理デスゲームです。推理デスゲームというのは今考えた造語ですが、探偵役が推理外すと死ぬという結構見かけるやつです。本作はVR空間の殺人を推理して、推理を外すと現実で殺されるルール。

主人公はVR空間では犯人役をやりつつ、現実での犯人を探すという、一粒で二度おいしい仕組みがうまい。VRならではの設定をいかした無茶苦茶トリックも素晴らしい。そしてデスゲームあるある、「なんでそんな面倒なことを?」という仕組み自体に隠された必然性というか動機も良いですねー。

本作の魅力は上述した、VR推理デスゲームという仕組みを徹底的に作りこんだことにあるんですが、もう一つの魅力は主人公の主人公力、名探偵力かな。デスゲーム物って、主人公がアホ行動とったりしてイラつくこともあるあるですが、本作の主人公は凄いよあんた完璧だよ、危機的状況での最善尽くしっぷりは本当にかっこいい。

本作「名探偵に甘美なる死を」は「竜泉家」シリーズで3作目ですが、前作読んでなくてもそこまで問題はないので、本作から入るのをおすすめします。1作目「時空旅行者の砂時計」のタイムマシンと、2作目の「孤島の来訪者」のトンデモ状況も十分面白いですが、個人的には本作が格ひとつ上なので。

 

どうも最近流行りの特殊設定ミステリってのは面白いのかな? という人には特におすすめですね。

【感想】同じ趣向が続いてつらい「クリスマス・プレゼント」ジェフリー・ディーヴァー

内容

リンカーン・ライムシリーズ(長編)で有名なジェフリー・ディーヴァーどんでん返しがメインの短編集

感想

うーむ、リンカーン・ライムシリーズはすごい面白いので、期待大で読み始めましたが、きっつかった、、、いやだって大体の短編が似たような趣向だし、ひねりは少ないし、、、もちろん光るものはあるけど、お前はそんなレベルの作者じゃないだろ、、、

続きの短編集あるけど、買えないなあ、おとなしく長編に戻ります

ディーヴァー読んでみたいなーって方は、本作はスルーして「コフィン・ダンサー」(ライムシリーズ2作目)から入るのがオススメです。犯人がすごいし、ミスリードもバシッと決まる。

【感想】超純粋ミステリ「アリバイ崩し承ります」大山誠一郎

内容

ひたすら容疑者のアリバイを崩す短編集

感想

極論すると、推理小説に人間ドラマとかストーリーとかキャラとか小説としての面白さって謎解きのノイズでしかないんだよねー、とか大学生の私はちょっとだけ思ってました、、、いや、実際ノイズを極限まで削った作品を読まされると、感慨深いな、、、

二冊とも作中ではマジでアリバイ崩ししかやってねえ、それなのにちゃんと面白いし、二冊一気に読んでも退屈しない

これだよ、これこそ推理小説の面白さなんだよ!

え、それなのになんで評価の星4つなのかって?

いや、その、言いづらいんですが、やっぱりノイズも必要なのかなーって、その、、、失くしてはじめて気づいた的な、、、うーん、でもこの小説で時計屋さんとの恋愛とかやられても困るんだよな、、、ノイズがあってもなくても文句言うかも、てへ

【感想】変化球を前に自分のストライクゾーンを探る「変格ミステリ傑作選 戦後篇1」

 

内容

変格ミステリの戦後編(1945~75)

感想

キワモノです。変な小説もミステリも好きだから挑戦! とはいえ、一巻(戦前篇)は読むのつらそうなので、二巻(戦後篇1、1945-75)から

結果はなかなか悩ましい、ちょっと選者と趣味が違うんだよなー、アリ半分、ナシ半分

そもそも変格ミステリってなんだろう? いや、おそらく一巻(戦前篇)には書いてあるのだろうが、、、本格ミステリの定義ですら世界大戦なのに、変格の定義なんて「個人的に変なミステリと感じた」くらいで限界だろう

となると具体例で語るしかなく、収録作でいうと「経営者入門」土屋隆夫変格ミステリの俺定義に一番近いかなー

新しめのだと「○○○○○○○○殺人事件」「その可能性はすでに考えた」あたりが俺変格

www.tsumi-kai.com

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両者とも変、かつ本格、人によっては壁に投げつけるくらい。でも好きなんだよなあ。

考えてみると、直球より変化球のほうがストライクゾーンに入れるのは難しいのだから、自分のミステリ観の再確認には向いているといえる、多分、、、

いや、それだけじゃないな「本格」からはみ出したのが「変格」という私の今までの変格観は間違いで、そもそも「本格ミステリ」が悪くいえば形式主義的で袋小路ぎみで狭量なわけで、、、生命の進化だって突然変異から起こるわけだし、変格ミステリは革新、進化に必要不可欠、「本格」の殻を拡張、破るための試みといえるのだ、そしていつかは「変格」と「本格」の境目はなくなる。その漸近の過渡期が現在であり特殊設定ミステリの隆盛はその象徴するところであるとかなんとか

久々にめんどくさいミステリオタクみたいなことを書いたぞ! どーせ、めんどくさいミステリオタクしか読まないでしょこの本、、、でもめんどくさいミステリオタクには下記の効用があります

・ミステリ観の再考

・上に書いたようなことを考えられるぞ暇人

・「変格」という観点の確立

・今度から変な小説よんだら、入れる棚ができます

戦後篇2、現在篇も買います(出ればね、、、出るよね、、、)

【感想】いままで読んだ全小説の中でワースト一位争い「原因において自由な物語」五十嵐律人

 

内容

いじめがあって人が死んだりとか

感想

今まで小説1000冊以上読んできたけど、ワースト一位候補、、、つまらない理由をあまり長々書いてもしかたないので一言でいえば「出来の悪さ、雑さ」かなあ

ミステリとしてはとても評価できる代物じゃないし、じゃあ小説、物語としてどうかというと、いじめとか小説の意義とかやりたいことは分かるけど、さっぱり伝わってこない。思い付きをそのまま無計画に書き留めていって、どうにか小説の形にいびつに繋いだだけ、としか感じられなかった。

読んでしまった言い訳としては、帯が豪華なんですよ、、、実力派の若手が揃っとる

推薦したお前らの名前、覚えたからな

画像はネットより

原因において自由な物語 帯 推薦文

 

【感想】期待した方向性とは違いました「神の悪手」芦沢央

 

神の悪手

神の悪手

Amazon

内容

将棋にまつわる短編集

感想

将棋は分かりませんが、「ハチワンダイバー」とか「3月のライオン」とか好きなんですよ。天才たちの魂のぶつかり合い、いいですよね。

なので将棋ミステリと聞いて、大いに期待して読み始めましたが、うーん、、、ちょっと方向性が違ったかなあ。ミステリとしてのネタがある作品が多いんですが、そのせいで直球勝負じゃなくて変化球になってしまうんですよね。じゃあミステリ部分はどうなんだと言われると、かなり定義を広めにとったミステリーで、驚きとかロジック、トリックにあまり重きを置いていない。一人称の主人公が頭の中で勝手に納得してしまって、読者としてはどうも今ひとつ。

少し厳しい評価になってしまいましたが、この作者はもう少し追いかけようという気にはなりました。

【感想】推理小説が好きなのがよく分かる「硝子の塔の殺人」知念実希人

内容

硝子の館に集められたゲストたち、クローズドサークル化、そして殺人事件の発生

感想

オーソドックスな感じの館ものだけど、読み進めていくうちにつのる不安、これちゃんと面白くなるんだろうな、、、

いやいや、解決篇ではあれがあれして、良かった一安心ですよ。

一つ一つの謎のクオリティが高いかというと疑問というか、、、いまいちだけど、、、それはあれがそれでごにょごにょ。そのあたりで厳しい意見も聞きますが、ロジックやトリックよりは物語の枠組みと、推理小説愛とかが評価ポイント。

2021年のミステリランキングでは上位でしょうねえ。

やっぱり本読みを名乗るなら、ちゃんと新刊ギャンブルに参加しとかないとね。これからは新刊読んでくぞー。