二壜の調味料ほか、スメザーズシリーズ
有名な表題作は見せ方が実に上手い。ワトソン役のスメザーズさん好き。よくある名探偵とワトソン物なのだけれど、ワトソン役の語り口が独特で、名探偵に対する素直な尊敬と好意が暖かくて楽しい。なにしろ原題はスメザーズの物語で、ワトソン役がタイトルになっているほど。表題作以外はネタが小粒だけど語り口のおかげで十分楽しめる。
その他の短編
「新しい名人」
チェスを指す機械が完全に将棋の電王戦の電王手くんだなあ、ただしこっちは礼儀正しくないけど。1952年か、われはロボットが1950、メルツェルの機械が18世紀だから意外とリアリティはあるのか。
「演説」
議会での演説を絶対に阻止するという犯人の予告に対し完全警戒でのぞむ警察。完全に予想外(知識外)のオチで面白い。
「ネザビー・ガーデンズの殺人」
殺人犯から屋敷の中で逃げ回る。お互いの機転が面白い。
「アテーナーの楯」
行方不明の女性のリアルな石像が発見されるが・・・。不真面目な変化球。こんなのがもっとあれば良かったなあ。
感想
奇妙な味を期待して読んだら意外とほとんどミステリでした。表題作は白眉ですが全体的にはミステリのネタとしては小粒。陰惨にならず軽妙だからまあ良いのかなあ。あまりおすすめでは無いです。
著者の本領はファンタジーだそうなので、次は河出文庫の短編集を読んでみようと思ったけど訳がひどいのか(Amazonレビューより)。悩む。